
(舛添 要一:国際政治学者)
昨年1年間に生まれた日本人の子どもの数は、前年より4万1000人余り少ない68万6000人余りで、初めて70万人を下回った。合計特殊出生率は1.15で、過去最低となった。中国、韓国、香港、台湾など、少子化は東アジアの共通の現象であり、それが今後の国際政治にも大きな影響を与えるであろう。原因の究明と対策が急がれる。
世界の動向
比較できるデータが揃う2023年で見ると、合計特殊出生率は、日本が1.20であったのに対して、中国が1.00、台湾が0.87、韓国が0.72であり、いずれも日本より低い。東アジア全体で1.01である。
一方、アメリカは1.62、ロシアが1.40、イギリスが1.20、フランスが1.68、ドイツが1.35、イタリアが1.20、カナダが1.20である。
アメリカの数字が高いのは、移民の流入によるところが大きい。トランプ政権が移民制限の方向に進めば、この数字も低下する可能性がある。G7の中で、フランスやドイツが高いのが目立つ。それは、積極的に少子化対策を講じてきたからである。
フランスでは、合計特殊出生率は、1993年には1.66まで低下したが、2006年には2.03に達し、2014年まで2.00以上を維持した。それは、保育支援、家族給付などの政策が功を奏したからである。また、結婚しないカップルや単身女性の出産も増えた。
しかし、それ以降は低下傾向にある。その背景には、女性の高学歴化と社会進出があり、経済的にも育児と仕事の両立が難しくなっていることがある。
ドイツでは、合計特殊出生率は、2011年の1.39から上昇し、2016年には1.59まで上がった。それは、2005年に3歳未満児への保育を拡大したり、2007年に「両親手当」を導入したりしたことが実を結んだのである。しかし、近年は、新型コロナウイルスの流行やウクライナ戦争の勃発、物価高、気候変動などの影響で、低下気味である。