
荏原製作所がグローバルでERP(統合基幹業務システム)導入を進めている。プロジェクトを率いるのは、同社執行役 CIO兼情報通信統括部長の小和瀬浩之氏だ。花王などでグローバルのERP導入を担い、「プロCIO」とも呼ばれる小和瀬氏は、こうしたCX(コーポレート・トランスフォーメーション:企業変革)のポイントをどこに置いているのか。経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会」の座長を務めた日置圭介氏、会の発足から携わった経済産業省の片山弘士氏と共に語り合った。
世界各社が「1つの組織体」として動く経営
――荏原製作所では現在、グローバルでERP導入を進めています。近年、日本の製造業においてIT基盤統一の重要性は語られているものの、なかなか進んでいない印象があります。CX研究会でも議題として取り上げられましたが、企業がこうした取り組みを進める鍵はどこにあると感じますか。
小和瀬浩之氏(以下敬称略) このような施策を単なる「IT改革」と捉えるのではなく、企業全体の「経営改革」として認識することが重要ではないでしょうか。私なりの表現で言えば、「インターナショナル経営からグローバル経営に転換する」ということです。ERP導入は目的ではなく、あくまでこの経営を実現するために必要なツールという位置付けです。

インターナショナル経営というのは、簡単に言えば、財務や人事、情報システムといったコーポレート機能を海外のグループ各社それぞれに持たせ、各々がある程度自立して経営を行うことです。
一方、グローバル経営というのは、全ての機能を各社に持たせるのではなく、「シェアードサービス」としてどこか1カ所に集約します。世界に広がるグループ各社が、文字通り1つの組織体として動く、一体で経営することを意味します。
これを実現するには、グループ全体で業務を標準化して、システムやデータを一元化しなければなりません。その一手としてERP導入があります。
――大前提として、荏原製作所ではグローバル経営への転換が必要だと考えたということですよね。