子どもの付き添い入院では、親は過酷な状況に置かれる(写真提供:キープ・スマイリング)子どもの付き添い入院では、親は過酷な状況に置かれる(写真提供:キープ・スマイリング)

 ある日、突然直面する子どもの入院。そのとき、親にはどのような生活が待っているのか。長女と次女の入院を経験し、その過酷な現実を自ら体験した光原ゆき氏は、入院中の子どもと家族を支えるため、認定NPO法人キープ・スマイリングを設立した。「付き添い入院」と呼ばれる家族の泊まり込みの実態、その背景にある社会的課題について、光原さんに聞いた。(聞き手:石井麻梨、オウルズコンサルティンググループ・シニアマネジャー)

子どもが入院したら親が面倒を見るのが当たり前?

──まず、子どもの入院について詳しく聞かせてください。お子さんの入院が決まると、親はどのような生活になるのでしょうか。

光原ゆき氏(以下、光原):病院によって細かなルールはさまざまですが、大きく分けると、親が「付き添う(院内に泊まる)」か「付き添わない(面会)」かの2択です。どちらかを選べないケースが多く、家族の事情にかかわらず、付き添いが半ば強制されたり、付き添いたくても付き添えなかったりします。

 付き添う場合は、子どものベッドで小さくなって眠るか、病室に簡易ベッドを置き、そこで寝泊まりします。付き添わないときは、親は面会時間にだけ病室に入ることができます。

 付き添いたくてもきょうだいがいたり、ひとり親だったり、仕事があったりして、実際に付き添えるかどうかは別の問題です。また、付き添えない病院に入院した場合は面会に通うことになりますが、家が遠方だと移動も交通費も大変になりますね。

──光原さんはお子さんの入院のとき、付き添っていらっしゃったんですよね。

光原:最初に長女が入院した病院は、ほぼ付き添うことが前提という雰囲気でしたので、私自身は「子どもが小さいと親も一緒に泊まり込むものなんだ」と思い、付き添いました。ですが、その後、複数の病院に入院し、病院によってさまざまなルールがあることを知りました。私自身としては付き添いを希望し、可能なところはすべて付き添っていました。

 NPO設立後、リアルな声をもっと聞きたいと思い、子どもが入院中の親の声を調査しましたが、付き添うにしても付き添わないにしても、親はかなり過酷な状況に置かれているということが分かりました。

 付き添いの大変さは、院内でずっと子どもの面倒を見ているにもかかわらず、暮らす環境が整っておらず、心身に大きな負担がかかることです。親は「子どもが一番頑張っているんだから」と自分のケアにまで手がまわらない。のちに行った調査では、約半数が体調を崩したことがあるとわかりました。

 また、毎日病院で寝泊まりしていると、だんだんと病院の状況も見えてきます。医師や看護師がいかに忙しく声もかけづらい状況かということ、そしてどなたも子どもに一生懸命に向き合い、力を尽くしてくださっているということは明らかでした。

 だからできる限り、自分の子どものことは自分でやろうとしました。おむつを替えたり離乳食を食べさせたり、沐浴したりという家庭でも行うことはもちろん、服薬、検査に連れていったり、細かな変化を観察・記録して医師や看護師に伝えたり、とにかくやることが多くて日中は忙しかったですね。

認定NPO法人キープ・スマイリング理事長の光原ゆき氏