キープ・スマイリングが提供している食事(写真提供:キープ・スマイリング)

 子どもが入院したときに、親が泊まり込む「付き添い入院」。だが、その現実は過酷だ。自身も付き添い入院を経験した認定NPO法人キープ・スマイリングの理事長光原ゆきさん。その経験を原点に「親も安心して子どもに寄り添える環境」をつくろうと、医療現場と社会をつなぐ活動を続けている。(聞き手:石井麻梨、オウルズコンサルティンググループ・シニアマネジャー)

生後5日で8時間の大手術に

──光原さんはもともと、リクルートでお仕事をされていたそうですね。

光原ゆき(以下、光原):はい。子どもを産む前は、終電に間に合えばまだ良い、という働き方をしていました。その中で、一般の方を対象とした医療系のウェブメディアの立ち上げに関わったことがあり、日本の医療制度や課題については、ある程度の知識はありました。

 そんな中、35歳で長女を出産しましたが、産休に入るギリギリまで働いていて、「出産後もすぐに復帰しよう」と思っていました。仕事を休むのはほんの数カ月。そう考えていたのです。

──ところが、そうはならなかった。

光原:出産してすぐ、赤ちゃんの様子がおかしいと言われ、気づけば「大学病院に搬送します」と、娘だけ救急車で搬送されてしまったんです。その後、いくつもの検査を経て、何万人にひとりという難しい病気が見つかりました。

「すぐに手術します!」と言われ、生後5日で8時間の大手術に……。もう頭が真っ白でした。すぐに仕事に復職するのは難しいだろうなと、頭をよぎりました。

 その後は集中治療室に入り、しばらくして個室に移ることができたのですが、看護師さんに「お母さん、一緒に泊まれますか」と聞かれて。ああ、親が付き添って泊まるものなんだと初めて知ったのです。そういうことも、それが「当たり前」だということも、まったく知りませんでした。

──初めての付き添い入院ですね。

光原:初めてだったので、看護師さんに「お母さん、これお願いします」と言われれば、「はい」と言われるがままに動いていました。

 たとえばそのとき、娘は鼻からチューブでミルクを入れていて。ミルクを温めて、点滴用の器に移し、管がちゃんと通っているかを聴診器で確認して、流れるスピードを調整しました。そういう一連のケアを「親がやるもの」として教わりながら、とにかく「自分がやらなきゃ」と必死にやっていました。

認定NPO法人キープ・スマイリングの光原ゆき理事長