
新学期が始まって1カ月が過ぎ、子どもたちが楽しみにしていたゴールデンウィークがやってきました。しかし、もしかしたら、この大型連休は子どもたちが「体験格差」を実感する時期かもしれません。保護者にとっても体験格差はつらいもの。近年、体験格差は大きな社会問題となってきましたが、その実態はどうなっているのでしょうか。どんな対策が練られているのでしょうか。やさしく解説します。
「体験格差」とは
東京都議会で今年3月、子どもの体験格差をめぐる質疑がありました。
「友だちと遊びに行くとか、部活動や習いごとをするとか、家族と旅行に行くとか、誕生日をお祝いしてもらうなど、多くの子どもが体験していることを体験できず、子どもらしい子ども時代を送ることができない、いわゆる体験格差」が広がっているとして、野党議員が東京都側の姿勢をただしたのです。
近年、体験格差は子どもの貧困を象徴するものとして広く認識されるようになりました。体験格差とは一般に「旅行や習いごと、休日に友だちと一緒に遊ぶ・家族でお出かけするといった、学校の外で行われる体験機会に格差が生じること」という意味で使用されています。大きな原因は、家庭の経済力の差です。さらに、親が休日も働きに出ている、子どもが要介護の家族の面倒を見なければならない、といった事情も挙げられます。
そうしたことから東京都は2025年度、新たな施策を実施することにしました。家庭の経済的事情などにかかわらず、全ての子どもが多様な体験をできるようにするため、関連事業を実施する区市町村に上限500万円の事業費を全額補助する制度を導入したのです。
しかし、行政の“事業”や教育現場の取り組みだけでは解決に至らないのが、この問題の難しさです。体験格差は、家庭の経済状況や保護者の働き方によって生じているケースが多いため、公的機関による体験機会の提供だけでは、なかなか格差是正が進まないのではないか、というわけです。
実際、上掲の都議会質疑でも質問者はこう続けていました。
「必ずしもそのこと(負担軽減)だけで、子どもらしい時間を取り戻せるとは限らないわけです。例えば、旅行などをしようとすると、多くの場合、子ども1人では難しい。そもそも、自分のしたいことをする、してもらうことがずっとできていなかった子どもにとっては、時間ができても、急に自分のやりたいことを出せるようになるとは限りません」
過去の都議会では、せめて経済的問題で子どもが引け目を感じたり、体験の機会を逸したりすることがないよう、例えば、海外の先進地のように「子どもの電車代を無料にするなどの措置を取ったらどうか」との議論も出ました。
カナダのトロントでは12歳まで無料・19歳まで割引運賃があり、英国ロンドンの地下鉄は10歳まで無料です。東京都の試算では、都営地下鉄の運賃収入のわずか0.4%を充てるだけで、12歳以下の子ども料金は無料にできるそうです。そうした点を踏まえての提案でした。