米グーグルが検索のあり方を根本から見直すとして「AIモード」の導入を発表してから約3週間が経過した。
この動きは、米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」などに代表される生成AIの急速な台頭に対し、検索の巨人が投じた次の一手として注目を集めている。
新機能は従来のキーワード検索とは一線を画し、AIチャットボットのように対話形式で回答を生成する。
米国のユーザーを対象に順次提供が始まっている。
グーグルが検索市場での支配的地位をいかに維持・強化しようとしているのか、その戦略や今後の検索体験への影響を考察する。
発表の場となったのは、2025年5月20日に米西部カリフォルニア州マウンテンビューで開催された年次技術イベント「Google I/O(アイオー)」である。
グーグルCEO(最高経営責任者)のスンダー・ピチャイ氏は、この新機能を「検索の完全なる再構築」と位置づけた。
「検索は、世界の他のどの製品よりも多くの人々にAIを届けている」と述べ、AI技術をより多くのユーザーに提供する手段としての検索の重要性を強調した。
対話型AIで検索を再構築:AIモードの機能と導入の背景
新たに導入されたAIモードは、ユーザーが検索ページや「Chrome」ブラウザーで有効にすると、AIが質問内容を理解し、対話を通じて直接的な回答や関連情報を生成・提示する。
従来のウエブサイトのリンク一覧とはこの点が異なる。
ユーザーは複数のウエブサイトを閲覧する手間が省け、より迅速かつ効率的に情報を得られるようになると、グーグルは説明している。
この機能は、同社が開発した大規模言語モデル(LLM)「Gemini(ジェミニ)」を基盤とする。
背景には、ChatGPTや米アンソロピックの「Claude(クロード)」といったAIチャットボットへの強い危機感がある。
これらのAIサービスは情報検索の新たな手段として急速に利用者を増やしている。質問に対して的確な答えを返すため、従来の検索エンジンを経由しない情報アクセスが可能だ。
グーグルの牙城である検索市場と、その収益の柱である検索連動型広告ビジネスを脅かしつつある。
ピチャイCEOは、「今、数十年にわたる研究が現実のものとなりつつある、AIプラットフォーム・シフトの新たな段階に入りつつある」と述べ、AI技術の進化が新たな競争局面を生んでいるとの認識を示した。
AIモードの導入により、ユーザーはより自然な言葉で質問し、文脈に即した詳細な回答や、複数の情報を統合・要約した結果を得られるようになる。
例えば、複雑な調査や特定の作業手順の確認などが、よりスムーズに行えるようになると期待される。
グーグルは、AIモード内でオンラインショッピング中に、ユーザー自身の写真をアップロードし、バーチャルで衣服を試着できる機能も導入する。これにより、オンライン購買体験の向上を目指す。