
東京都が善福寺川周辺(杉並区)で進める上流調整池事業(以下、善福寺川上流調整池)の費用対効果分析(B/C:ビー・バイ・シー)を疑問視する声が、住民の間で高まっている。
善福寺川上流調整池について、都の資料から抜粋すると「都道である五日市街道、環状八号線、青梅街道、女子大通りおよび善福寺川の地下約40mの深さに、延長約5.8km、内径9m程度の地下貯水池(トンネル式)を整備し、約30万m3の洪水を貯留する」というものだ。
2024年1月の杉並区の審議会等を経て、2025年1月に事業認可された事業である。
【参考】「聞いてないよ!」東京都が作成の善福寺川治水計画に杉並区から反対意見続々(2024.2.2)
示された費用対効果分析は善福寺川上流貯水池単体のものではなく
B/Cを疑問視する声が高まるきっかけとなったのは、住民団体「善福寺川流域の自然と暮らしを守る会」(以後、守る会)が今年2月に開催した「住民と共に歩む専門家会議」。都市工学が専門の大西隆・東京大学名誉教授(元、日本学術会議会長)が、「起きている被害に対する都の対策が、見合っていないのではないか。費用対効果を検証する必要がある」と提起した。

大西教授の提起はこうだ。
公共事業のB/Cは「1」以上でなければならない。都は、善福寺川上流調整池の説明会等でB/Cは「1.41」との数字を出しているが、よく見ると、神田川流域河川整備計画全体のB(6814億円)をC(4844億円)で割った結果に過ぎない。
神田川支流の「善福寺川上流地下調節池」単体の事業費は1,557億円で、それを上回る「便益」が果たしてあるのか。「1」を下回る可能性があるのではないかというのだ。