
「マネジメントの父」ピーター・ドラッカーがこの世を去って20年。今なお、多くの経営者やビジネスパーソンから支持される理由の一つに、社会や組織のマネジメントをテーマとして扱いながら、人としての成長を促す色あせないメッセージを残してきたことがある。自己実現や組織論、ビジネスマインドなど、彼の言葉から見えてくる「働くこと」の本質とは?
本稿では、『ドラッカーに学ぶ仕事学』(佐藤等著/致知出版社)より内容の一部を抜粋・再編集。いかに自分の強みを見つけ、磨いていくのか。ドラッカーの言葉から、その方法を探っていく。
ドラッカーを形づくった「強み」と「得意分野」

■ ドラッカーにとって人生最高の教師とは?
少年ドラッカーは、自分には不得意なものがあることを10歳で気づいていました。
綺麗な字を書くこと、大工道具を使えるようになること――ドラッカーの小学校の先生は、これらを断念し、飛び級で上級の学校に進むことをドラッカーの親に提案します。
それは、不得意を凌駕してあまりある、ドラッカーの抜群の成績へのご褒美でした。得意なことと不得意なことをどのように扱えばいいのかを、彼は人生で初めて学んだのです。
長じてドラッカーは、教えることと学ぶことに対する関心の高さから、偉大な教師がいるという噂を耳にすると講義にもぐり込み、見聞を広めるようになりました。その結果、皮肉にも、自分が不得意とした分野を教えた国語と工作の小学校の先生が人生最高の教師であることと、一流の教師には二つのタイプがあることを知るのです。
工作の先生は天賦の教師の才によって「ふむ、ふむ」「よし、よし」などと知覚的に教え、国語の先生は方法によって、具体的には、ワークブックを用いて計画的に学ばせました。