2025年5月9日、関東インカレ、男子100m決勝、ゴールする栁田大輝 写真/時事通信フォト

(スポーツライター:酒井 政人)

前年の1部王者が2部で貫録の走り

 今年で104回目を迎えた関東インカレは大学対抗戦で各校の応援が熱い学生陸上界の花形大会だ。

 男子は1部(16校)と2部(3部のある種目もある)があり、今年は100mが異様な盛り上がりを見せた。

 この時期の相模原ギオンスタジアムはホームストレートが強い向かい風になることが多く、100mはバックストレートで実施。そして2部から“快記録”が飛び出した。

 最初の主役となったのは100mで10秒13の自己ベストを持つ守祐陽(大東大4)だ。守は昨年の男子1部100mのチャンピオン。しかし、チームが1部残留を逃したために、最終学年は2部での出場になった。

「1部で戦いたかった気持ちが強くて、1部の結果を気にしながら2部を走りました。先に走る分、プレッシャーを与えたかったですし、1部よりいい走りをしたいと思っていたんです」

 守は準決勝1組で追い風参考ながら山縣亮太(慶大)が保持していた大会記録(10秒23)を上回る10秒07(+3.6)をマーク。会場を沸かすと、決勝でさらにタイムを短縮する。

 鋭いスタートで飛び出すと、グングンと加速。後続を引き離して、トップでフィニッシュラインを駆け抜けた。電光掲示板には「9.98」という数字が灯り、会場にどよめきが起きた。

 公式タイムは9秒97(+3.9)。追い風参考ながら9秒台を叩き出したのだ。

「驚きが一番強いです。まさか出ると思っていなかったのでビックリしています」と守。9秒台で駆け抜けた“感触”については、「追い風がすごく強かったので、走っていて気持ち良かったという感じはありました」と表現した。

 守は昨季、4月の織田記念を制して注目を浴びたが、6月の日本選手権準決勝で左腓骨筋を痛めると、9月の日本インカレは準決勝で敗退した。冬季は「体づくり」を見直して、筋力アップで体重が2kgほど増えたという。2週間前の日本学生個人選手権は4位と振るわなかったが、最後の関東インカレで快走した。

「あまり欲張らないように、準決勝のいい動きのまま走りました。タイムはあまり考えていなかったので、驚き8割、うれしさ2割ですかね。去年から20~30m付近の加速のパワーが増しただけでなく、最初の飛び出しも良くなりました。このタイムが出たんですけど、(公認での)9秒台は別のスピードという感じはするので、まずは10秒0台を出して、着実にタイムを縮めていければなと思います」