2025年3月9日、名古屋ウィメンズマラソンでの五島莉乃 写真/SportsPressJP/アフロ

(スポーツライター:酒井 政人)

「ゴールだけでは絶対にする」と臨んだ五島

 佐藤早也伽(積水化学)が日本歴代9位の2時間20分59秒で日本人トップに輝いた名古屋ウィメンズマラソン2025。佐藤以外にトップ集団に挑んだ注目選手たちはどんな戦いを見せたのか。

 まずは初マラソンとなった五島莉乃(資生堂)だ。パリ五輪10000mに出場した日本屈指のスピードランナーだが、16km付近でトップ集団と明らかな差がついた。

「15kmの給水でちょっと遅れてしまって、そこから追いつこうと思って走ったんですけど、思うようにはいきませんでした……」

 中間点の通過は1時間10分58秒で、トップ集団とは100mほどの差がついていた。後半のハーフはさらに厳しい戦いが予想されたが、「どんなんにきつくて、どれだけ遅くても、ゴールだけは絶対しようと思っていました」と五島は“覚悟”を持って、最後まで駆け抜けた。

「後半はラップがどんどん落ちている感覚があって、脚もどんどん止まっている感覚もあったんです」と苦しい走りになったが、2時間26分08秒の10位でフィニッシュラインにたどりついた。

 レースを終えた五島は、「今回は行けるところまでついて走ろうと思っていたんですけど、苦しくなる段階がちょっと早かったなと思います。何て言うんですか。初めての感覚です。もう(脚が)動かない。練習は乗り越えて頑張ってきたんですけど、マラソンは難しいなと思いました」と素直な感想を口にした。

 一方で充実感も味わったようで、「苦しい初マラソンになったんですけど、沿道の方や、すれ違うランナーの皆さんが、『五島さん頑張って!』と声をかけてくれて、ずっと苦しかったけど、ずっと頑張れました」と声を張り上げた。

「正直、楽しかったとは今は言えません。でも、この苦しさを乗り越えたから、次はもっといい結果を出したいなって思います。今回の結果を受け止めて、ここから始まりだと思って頑張りたいです」

 初マラソンで「壁」を感じたという五島だが、いつの日かマラソンの後に笑顔を見せてくれるだろう。