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 今や半導体は経済安全保障の要であり、各国が自国での開発・製造に注力している。水平分業化された半導体産業において、足元ではファブレス(設計)の米エヌビディアとファウンドリ(製造)の台湾TSMCが大きくリードしているが、技術進化は早く、勢力図がいつ一変しても不思議はない。本稿では『日台の半導体産業と経済安全保障』(漆畑春彦著/展転社)から内容の一部を抜粋・再編集。世界の半導体産業と主要企業を概観するとともに、日本の半導体開発の最前線に迫る。

 半導体ファウンドリ市場で「世界一強」と評されるTSMC。拡大が続く好業績の背景とは?

台湾積体電路製造股份有限公司(TSMC)

 台湾積体電路製造股份有限公司(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company:TSMC)は、世界初のファウンドリ、世界最大の半導体メーカーである。本社のある新竹サイエンスパーク(台湾・新竹市)を中心に、台湾、中国、シンガポール、日本で半導体製造事業を展開している。

 現在、北米や欧州にも製造拠点を建設中であり、近い将来半導体の量産を開始する予定である。全世界で従業員約7万6000名(2023年末現在)を雇用する、東アジアを代表する巨大企業の一つである。

 2024年12月の通期連結売上高は、前年同期比33.9%増の2兆8943億台湾ドル(約14兆円)、営業利益は同43.5%増の1兆3221億台湾ドル(約6兆4000億円)、純利益は同39.9%増の1兆1724億台湾ドル(約5兆6700億円)と、極めて良好な業績をあげた。

 2023年は、コロナ禍による急激な需要増からの反動減、在庫調整による半導体市場縮小の影響から業績は振るわなかったが、2024年は大幅な回復を見せた(次ページ図表2-2)。売上高営業利益率は、2022年49.5%、2023年42.6%、2024年45.7%と2020年以降一貫して40%を超えており、製造業の中で極めて高い収益性を維持し続けている。

 2024年の売上高は、毎月一貫して前年同月を上回った。同年10月の売上高は、前年同月比29.2%増の3142億台湾ドル(約1兆5000億円)に達し、月次売上高としては過去最高を記録した(次ページ図表2-3)。